真鶴

真鶴

真鶴

昔、大切な人が突然いなくなったことがある。

さよならもなく。

今もどこにいるかわからない。

あの日を境に、俺の精神構造は明らかに変わってしまった。

それぐらい強い衝撃をおぼえた。

たぶん、死んでしまうことよりも。


不思議な文体が、ゆっくりと、ときにはつよく、しみ込んできた。

こんなこともあるのかなという共感ではなく、どちらかというと共鳴。


ちなみに真鶴は、たまたま大学時代の研究で
まちあるきをしたことがある。

何ともいえない色のまちだなあと、
ぼーっとしながら一時間ほど
色鉛筆で淡い色あいのスケッチをかいた。

行ったことのない方は、是非一度。
真鶴港からすり鉢状に広がる家々の姿や、
眺めを独占しないようにたたずんでいるまちなみ、
心地よい「ゆらぎ」を感じさせる路地、
丁寧に積まれた石垣が美しいまちだ。

そんなまちなみの先に、海に突き出た緑の半島がある。

魚を育て、水をため、港をふちどっている、
生き物のようなグリーンのかたまりが、
この物語の色合いになんとなく似合っている気もする。