真鶴
- 作者: 川上弘美
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2006/10
- メディア: 単行本
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昔、大切な人が突然いなくなったことがある。
さよならもなく。
今もどこにいるかわからない。
あの日を境に、俺の精神構造は明らかに変わってしまった。
それぐらい強い衝撃をおぼえた。
たぶん、死んでしまうことよりも。
不思議な文体が、ゆっくりと、ときにはつよく、しみ込んできた。
こんなこともあるのかなという共感ではなく、どちらかというと共鳴。
ちなみに真鶴は、たまたま大学時代の研究で
まちあるきをしたことがある。
何ともいえない色のまちだなあと、
ぼーっとしながら一時間ほど
色鉛筆で淡い色あいのスケッチをかいた。
行ったことのない方は、是非一度。
真鶴港からすり鉢状に広がる家々の姿や、
眺めを独占しないようにたたずんでいるまちなみ、
心地よい「ゆらぎ」を感じさせる路地、
丁寧に積まれた石垣が美しいまちだ。
そんなまちなみの先に、海に突き出た緑の半島がある。
魚を育て、水をため、港をふちどっている、
生き物のようなグリーンのかたまりが、
この物語の色合いになんとなく似合っている気もする。